ダイエーとイオングループの勝敗を分けたもの

ダイエーは1990年代まで球団(ダイエーホークス)を所有して、スーパーマーケット業界で栄華を極めておりました。

しかし現在では、イオングループの傘下に入っております。

なぜ後発のダイエーはイオングループに吸収されるに至ったのかを解説します。

ダイエーの成長戦略は駅前出店

ダイエーの中内社長は駅前出店する事で集客する事を戦略の主軸と置きました。

出店に際して、近隣の商店街や商工会議所ともめる事もありましたが、安さを売りにして近隣住民を味方につけて、次々と駅前出店を実現していきました。

さらに、当時のダイエーでは土地錬金術による利益も上げておりました。

土地錬金術というのは、駅前出店に向けて店舗に必用な土地よりも少し大きめの土地を購入して、出店後に値段が上がった余剰地を高く売却する事で、利益を上げるという手法です。

この時、バブルによる土地価格の上昇も手伝い、ダイエーはどんどん利益を上げて、規模を大きくしていきました。

また、この時の成功体験から、ダイエーはその後も駅前出店を主軸として拡大戦略を打ち続けました。

イオングループの台頭

三重県四日市市のもともと呉服屋である岡田家は1958年にオカダヤ百貨店をオープン。

その後、ジャスコ~イオングループへと成長し、一時栄光を極めたダイエーをも傘下に収めるまでになりました。

ではなぜ、イオングループはここまでの成長を遂げる事が出来たのでしょうか?

そこには、時代を見据えた的確な成長戦略が関係しておりました。

ダイエーホールディングスが駅前出店にて成功する中、岡田家が打ち出した成長戦略はダイエーのものとは真逆のものでした。

それは、「駅から離れた田舎に広大な駐車場を持つスーパーを出店する」というものでした。

「これからは自動車の時代なので、駅前の駐車場の無い店舗ではなく、郊外で広い駐車場のある店舗に客が集まる」という事を見越した戦略でした。

この戦略が見事に功を奏して、イオングループは破竹の勢いで成長を遂げております。

今後の成長戦略

破竹の勢いで成長を遂げたイオングループですが、盛者必衰という言葉があるように、同じ方法で永久に反映はできません。

継続的に事業を発展成長させる為には、時代を読んで、適切な戦略を考える力が必要となります。

スーパーマーケット業界で言うと、「安くて」「品ぞろえ豊富」「アクセスが良い」というのは既に必須条件になっており、今後更なる成長を果たす為には、プラスアルファの価値創出が求められるのではないでしょうか?

一例として、ネットスーパーによる宅配サービスなどが挙げられます。コロナ渦における特需もさることながら、高齢化が進むこれからの時代において確実にニーズが高まるサービスと考えます。

その他には、AIの発達により、冷蔵庫等の家電製品とコラボして、ストックの切れた常備食材や調味料を自動発注するサービスや、献立を考えるのが億劫な方への、献立提案+必要な食材のパック販売といった業態を取込む事も出来るかもしれません。

その実現には、物流網の確保やシステム開発等の投資が必要となりますが、そういったプラスアルファを打ち出し続ける会社が今後も成長を続けるのだと考えます。

トヨタ自動車の場合

少し業種は変わりますが、日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車の戦略はどうでしょうか?

トヨタは2018年1月、アメリカのラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)にて「自動車メーカーからモビリティサービスの会社になる」ことを公言しております。

これも正に、時代を見据えた成長戦略といえます。

その背景として、自動運転技術の発展が大きく寄与しております。

この自動運転技術が完全無人で自動車をコントロールできるフェーズに至った場合、タクシーやバスの価格破壊が起こります。

タクシーやバスの運営においてかかる費用の大半をドライバーの人件費が占めております。

即ち、完全自動運転の技術によりドライバーが不要となると、これらの移動手段の価格は大幅に安くできるという事です。

人件費がかからなくなると実際にかかる費用としては、自動車本体代とガソリン代、そして保険料のみとなります。

更に、自動運転の精度向上により事故が激減すると、保険料も自ずと引き下がります。

そうすると、最終的に残る費用は自動車本体代とガソリン代のみとなります。

そうすると、自動車の使用頻度があまり高くない人からすると、タクシーを呼んだ方が断然経済的になります。

そこを見越して、自動車を売る時代から、移動手段となるサービスを提供する会社に生まれ変わるという戦略をいち早く打ち出したわけです。

更にこの自動車によるモビリティサービスが進化したらどのような事が起こるでしょうか?

完全自動化により事故が発生し無くなれば、制限速度の無い専用道を超高速で移動させる事も出来るようになります。まるで遊園地のアトラクションに乗るように、東京大阪間を高速で移動する専用自動車なんかができるかもしれません。

そうすると、鉄道や国内航空業界の市場をも飲み込む一大市場になりえます。

トヨタは既に町づくりを始めておりますが、これは上記のようなビックプロジェクトに向けた布石なのではないかと考えます。

ドラえもんの世界で透明の管の中を車が飛んでいるような描写を目にしたことが有りますが、それほど遠くない未来にそう言った時代が来るのかもしれません。