PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とPLC(プロダクトライフサイクル)の関係をわかりやすく解説

大小全ての事業にとって永遠の課題は、事業を安定的に継続させていく事ではないでしょうか?事業とは、基本的に改善し続けない限り衰退していきます。

既存の競合他社による価格攻勢に加え、新規参入企業や後進国の低価格戦略、新商品による置換え等によっても事業の継続性は危機にさらされます。

そんな中でも、事業主は雇用を守る為、事業を継続させる必要が有ります。では事業を継続させる為にどのような事に留意する必要が有るのか。今回はプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントという考え方について解説していきます。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは事業資金をどのように各事業に配分するかを決める為に用いられる経営理論であり、「市場成長率」と「市場占有率」の2軸で表されます。

これらのフェーズは、プロダクトライフサイクルとも密接な関係がある為、照らし合わせながら各フェーズでどの様な取り組みが必要になるかを見ていきましょう。

①PPM 問題児(導入期)

まず、新製品を市場に投入してすぐの導入期は、市場シェアは低く、市場成長性は高い事が多い為、売上規模としては小さいと考えられます。

この状態をプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは「問題児」と呼びます。

「問題児」のフェーズでは、市場シェア拡大が目下の課題となります。

市場成長率も高い為、開発費、広告費等に積極的に資金投入を行う事で、シェアを確保していきます。

売上拡大、及びシェア確保を目指す際に注意すべき点として、「Iメッセージ」ではなく、「Youメッセージ」で伝える事です。

即ち、「この製品(I)はここが良いです」ではなく、「あなた(You)は、この製品を利用する事でこのようなメリットがあります」とする事でより効果的な販売促進に繋がります。

例えば、遊園地のCMでは、単純にアトラクションの紹介をするのではなく、そこに来た人達がどのような表情で、どの様な感情になるのかを描写する事で、より効果的に「行ってみたい」という気持ちにさせます。

B to Bで機械部品を販売する場合、その部品の良さに注目するのではなく、その部品を使う事で、お客様の商品がどう良くなるのかや、メンテナンスコストが削減できる為、総コストを抑えられる等、お客様にとってのメリットを明確に示す事で、購買意欲を効果的に刺激できます。

②PPM 花形(成長期)

次に、成長期のフェーズへと差し掛かり、市場規模と市場シェアが拡大する事で、売上規模が急成長していきます。

成長率の高い市場において、高いシェアを確保している事業をプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは「花形事業」と呼びます。

「花形」のフェーズでは、市場成長に伴う売上拡大が課題となります。

事業規模拡大に積極的に資金投入を行う事で、拡大する需要へ対応し、売上を拡大していきます。

このフェーズでも、顧客のニーズを把握したうえで、顧客のメリットを示すことで、既存顧客の維持及び新規顧客の取込が可能となります。

③PPM 金のなる木(成熟期)

成熟期に差し掛かると、需要の拡大は落ち着いてきます。

事業の利益規模はこの「成熟期」において最大化します。

市場シェアを確保したまま、市場成長率が低下した事業を「金のなる木」と呼びます。

「金のなる木」のフェーズにある事業は、市場の成長も落ち着いている為、積極的な資金投入は行わず、この事業で得た利益(資金)を今後成長が見込まれる「問題児」、「花形」事業に投入していきます。

ここで大事なのが、継続的なシェア確保により、「負け犬」事業になる時期を遅らせる事です。その為には、継続的な改善により、競争力を確保し続ける必要が有ります。

ただし、成長性は乏しい為、積極的な資金投入は行わず、安価に行える改善により、費用対効果を最大化する事が賢明です。

④PPM 負け犬(衰退期)

市場が成熟した後、代替え商品や低価格品によりシェアが低下していき、「衰退期」へと移行します。「衰退期」では売上減少に伴い、利益率が悪化していきます。

市場成長率、市場シェア共に低下した事業を「負け犬」と呼びます。

「負け犬」のフェーズでは、売上低下に伴う利益悪化が進む為、事業縮小、事業撤退の出口戦略が必要となります。

事業撤退にも設備の廃却等で資金が必要となる為、撤退時期の見極めは事業主にとって非常に重要な能力となります。

この判断基準として、「限界利益」と「市場での競争力」に注目します。

「限界利益」がマイナスで、「市場での競争力」を確保できる見込みがないのであれば、縮小・撤退する事で、損失の最小化を図ります。

一方で、「限界利益」がマイナスだとしても、「市場での競争力」がある場合は、値上げや販売ボリューム拡大により、黒字化を目指します。

また、利益を確保できなくなった事業から適切なタイミングで撤退する為にも、次の「金のなる木」になる事業を育てておく必要があります。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM) まとめ

どの様な事業(製品)も永久に売れ続けることはありません。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは、「成熟期」にある「金のなる木」の事業で得た利益(資金)を「問題児」「花形」事業に積極的に投入して、次に「金のなる木」になる事業を育てる事が、継続的に事業を行う為にはとても重要です。

特に製造業では多大な設備投資を行い、市場シェアを確保してきた為、既存製品が「成熟期」、「衰退期」に差し掛かっても、既存製品の改善にこだわり、適切な出口戦略を実行に移せないという現象が往々にして見られます。

この現象を「革新者のジレンマ(イノベーションジレンマ)」と呼びます。

大企業の場合は、経営判断を行うのは長年勤めあげてきた往年の役員の為、ジリ貧になることが目に見えていても、リスクを負って変革を求めるより、あと数年(自分の任期の間)持ちこたえられるように既存の製品にすがるという状況は珍しく無いのではないでしょうか。

そういった時代において、これからの若い世代には自主的、積極的な提案~実行型の姿勢が必要となります。

事業毎のフェーズを見極め、今何をすべきかを考えて、実行していきましょう。