チーズはどこへ消えた をビジネス視点で解説

「チーズはどこへ消えた(スペンサージョンソン著)」は今なお多くのビジネスマンに読み継がれる名著ですが、一見子供向け絵本のようなタイトルの本書がどのようにビジネスに役立つのかを例を用いてわかりやすく解説します。

「チーズはどこへ消えた」のあらすじをわかりやすく


チーズはどこへ消えた? [ スペンサー・ジョンソン ]

まずは、本書のあらすじを説明します。

本書には4人(2匹と2人ですが、便宜上4人とします)の登場人物が出てきます。

ネズミのスニッフとスカリー:頭は良くないが、嗅覚が優れており、行動力と決断力がある

小人のヘムとホー:頭がよく、分析が得意

4人は毎日迷路の中にチーズを探しに行きます。

朝早く起きて、ランニングシューズとランニングウェアを着て、迷路の中を探索して、家に戻るという生活を続けていました。

そんなある日のこと、4人はチーズステーションCで大量のチーズを発見します。

4人は大喜びでチーズにありつきます。

それから4人は、毎朝チーズステーションCに行ってたくさんのチーズを食べる生活を送りました。しかししばらくたって4人の生活に変化が出始めます。

ネズミのスニッフとスカリーは毎朝早く起きてチーズステーションCに行って、変わった点が無いかを確認してからチーズを食べました。

一方小人のヘムとホーはチーズがたくさんある事に安心している為、遅く起きて、ゆっくりチーズステーションCに行ってチーズをたくさん食べて帰りました。

損な生活がしばらく続いた後のある日、ネズミのスニッフとスカリーがいつも通り朝早くチーズステーションCを訪れると、チーズはなくなっておりました。

しかし2匹はチーズステーションCのチーズが少しずつ減っている事に気づいていた為、変化に驚くことはせず、即座に次のチーズを探す為に迷路探索を再開しました。

一方ヘムとホーは、遅れてチーズステーションCに来て、チーズがなくなった事を知りました。

2人はチーズがなくなった事にショックを受け、「自分達が頑張って手に入れたチーズがなくなっていいはずがない」と、腹を立てました。そして、新しいチーズを探すのではなく、チーズが本当になくなったのか分析を始めました。

小人の二人がチーズステーションCで悶着している間に、ネズミの2匹はどんどん迷路探索を進めて、チーズステーションNにある新たなチーズを発見していました。

その量はチーズステーションCとはくらべものにならないほど大量で、種類も豊富でした。

一方、小人の二人は待てど暮らせどチーズステーションCのチーズは戻ってこず、ホーはこのままではいけないと思い始めます。ホーは迷路で新しいチーズを探すべきだとヘムに言いますが、ヘムは聞く耳を持ちません。

見かねたホーは、一人でチーズ探しを再開します。

ホーは何度も挫けそうになりながらも、「新しいチーズはきっとあるはずだ」と信じて、迷路を突き進みます。

そして、ついに、ネズミたちのいるチーズステーションNにたどりつきます。

ホーを歓迎するネズミたちは、とても健康的に肥えており、ずいぶん前からチーズをたくさん食べていた事がわかります。

その後、ヘムがどうなったのかは最後まで描かれることはありませんでした。

「チーズはどこへ消えた」をビジネスのシーンに置換えて解説

次にこの物語をビジネスのシーンに置換えて考えます。

まず、チーズとは、ビジネスにおいて、売れる商品や買ってくれる消費者、市場だと考えられます。

そしてチーズを探す4人はそれぞれ、経営者や会社で働くメンバーに置換えて考えられます。

たとえば、カセットテープを作る会社は、音楽ブームにより、カセットの需要が好調となり大きな利益を生み出す事になった。

彼らは、カセットテープというチーズを発見(開発)する事に成功しました。しかし、市場に変化が生じ、MD(ミニディスク)が市場に出回り始めると、カセットテープの需要は地に落ちました。
そこで、2匹のネズミのように、迅速に変化を受け入れて、新たな製品開発に舵取りをできたフィリップス社はその後、医療機器という新たなチーズを発見する事で、世界の主要電機メーカーの中で最も利益率の高い企業に上り詰めました。

一方で、ヘムのように、既存の技術に縋り、市場の変化を受け入れなかった会社の多くは、そのまま淘汰されていきました。

「チーズはどこへ消えた」から得られる教訓

これからの時代、IT技術の進歩により、市場の動きはより早く変化していく事が予想されます。そんな時代においては、一度儲かるビジネススタイルを確立したとしても、ずっと稼ぎ続けられるわけではないという事を常に念頭に置いて、2匹のネズミのように、常に変化を意識して、チーズが突然亡くなってしまってもあせる事が内容に準備をする必要が有ります。

また、ヘムのように、チーズがなくなった事に腹を立てている時間が有れば、いち早く新しいチーズを探す為に動き始める敏捷性もこれからの時代は非常に大切な要素となります。

そして、ホーがチーズステーションNにたどり着いた時、既にネズミ2匹は大量のチーズを食べて太っていたことから、早く動いたものはより多くの利益を得られる(ビジネス用語では先行者利益という)事を暗に示しております。

これらの教訓をしっかりと役立てる為にまず、自分はこの登場人物たちの中で誰に最も近いのかを考えます。

気持ち的には、自分はネズミたちの様だと言いたい所ですが、実際にはヘムやホーのような人も多いのではないかと思います。

自分の日々の業務を思い返して、自分の行動はどの登場人物の思考パターンに近いのかを真剣に考えてみてください。

そして、どの登場人物のようになりたいのか、その為には、どうすべきかを考えて、実行する事で、貴方のアウトプットは劇的に変化する事でしょう。

本書をよりビジネスに役立てる為の補足

本書の内容はビジネスに役立つ様々な考え方を包括的にわかりやすくまとめた内容となっております。その一部を補足として紹介します。

ヘムが「チーズがなくなった事」を受け入れられないのはなぜか?

ビジネス用語に「イノベーションのジレンマ」という言葉有ります。

これは、ある事業(製品やビジネスモデル)で成功を収めた事業者は、その成功体験に縋り付くあまり、市場の変化を受け入れられず、新製品や代替商品の出現により衰退していくというものです。

何故市場の変化を受け入れられないのかというと、ヘムも主張していたように、「自分達は頑張ってこのチーズ(ビジネス)を見つけたのだから、もっと報われるべきだ」という思いが強く、その商品が売れなくなるはずがない、きっと何かの間違いだとなります。

そして、そうこうしている間に赤字が膨らみ、次のチーズを探す体力(新しい製品を開発する資金力や時間)が無くなってしまいます。

本書では、ヘムが最後にどうなったかは意図的にぼやかせておりました。

これはきっと、沈没するまで船にしがみつくのか、ギリギリでも見切りをつけて、生き残る方法を模索するのかを、現実世界のヘムである読者に問いかける為なのだと思います。

「チーズが戻ってくるのを待つ」は何故いけないのか?

ヘムはチーズステーションCのチーズが戻ってくる事を信じて、待ち続けました。

これをビジネスに置換えると、うちの会社は頑張って、いい物を作ったのだから、きっとまた買ってくれるようになるはずだという考えになります。

スティーブン・R・コヴィーの著書「7つの習慣」の中に、最も重要な習慣(だと私が考える)「主体的である」というものが有ります。

この習慣を要約すると、自分にコントロールできる所に意識を集中して、自分にできる事をするというものです。

2匹のネズミは、チーズがなくなったという外部環境の変化を受けて、今自分達にできる事として、新しいチーズを探す事に注力しました。

一方で、ヘムはチーズがなくなった事に対して、何故「チーズ」がなくなったのか、「誰か」がきっとまたチーズを運んでくるはずだと、「自分以外」に意識を集中している事がわかります。

私の好きな言葉に「なるようにしかならない」というものが有ります。

これは、一見後ろ向きな言葉のようですが、私の理解では、「自分にコントロールできない部分のことを考えても、なるようにしかならない。だから、自分にコントロールできる所に注力して、何をすべきかを考えよう」という前向きな言葉だと受け止めています。

例えば、あるプロジェクトの設備投資をするかどうかの判断を下す為に判断材料をまとめるという仕事が有ったとします。私はその投資の最終決裁権限を持っていないけれど、会社の利益の為にベストな判断が下る事を願っています。

この場面において、最終決裁者の判断は私のコントロール外の事なので、「なるようにしかならない」部分です。

しかし、正しい判断を下してもらう為に、私がどのような情報をまとめるのかという点は、自分でコントロールできる部分です。

投資費用はいくらで、その結果得られる効果はいくら、投資回収期間は何か月、また副次的な効果としてどのようなメリットが得られて、デメリットはどういったものが考えられるという点を整理する事で、どうするのが利益最大化につながるのかを明確に示すことはできます。

この時、ヘムのような考え方であれば、決裁者に指示された内容だけ答えるといった消極的な働き方になるかもしれません。しかし、考え方を変えれば、自分の影響の輪を広げて、「コントロールできる部分を広げていける」というのが、「主体的である」事の興味深い部分です。

「チーズはどこへ消えた」はとても短く簡単に読める物語ですが、そういったとても大事な教訓も包括的に教えてくれる名著だと思います。

本記事で興味を持たれた方は是非手に取って読んでみる事をお勧めします。


チーズはどこへ消えた? [ スペンサー・ジョンソン ]

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