事業を成功させるうえでマーケティングはとても重要なファクターとなります。ではマーケティングとは具体的にはどのような事を行うのでしょうか?今回はマーケティングの中身を理解する為に、マーケティングの4Pについて詳しく解説します。
目次
マーケティング全体の流れ
まずは、マーケティング全体の流れを説明します。
マーケティングの流れは以下のプロセスに分類できます。
①マーケティング環境の分析、目標設定
②ターゲットマーケティング(市場細分化、標的市場の選定、市場ポジショニング)
③マーケティングミックスの開発、実行
マーケティングの4Pとは「③マーケティングミックスの開発、実行」において企業が市場に投入する以下4つのマーケティング要素のことです。
①Product(プロダクト:製品)
②Price(プライス:価格)
③Place(プレイス:流通)
④Promotion(プロモーション:販売促進)
その為、マーケティングの4Pを理解する為には、まずマーケティング全体の流れを理解する必要があります。
では順に説明してまいります。
①マーケティング環境の分析、目標設定
マーケティングの対象は大きく外部環境と内部資源に分けられます。
戦法書として有名な孫子の一説にも「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とありますが、ビジネスにおいても、相手(外部)と自分(内部)をよく知る事が勝利のカギといえます。
外部環境分析は以下に分類できます。
1)マクロ的外部環境
①経済的環境・・国内総生産、経済成長率、景気動向、失業率、可処分所得 等
②実行動態的環境・・出生率、人口規模、高齢化と少子化、世帯構成 等
③社会文化的環境・・文化、国籍、宗教、人種 等
④技術的環境・・情報通信技術、加工技術 等
⑤政治・法律的環境・・法律、政府機関の意思決定、規制緩和 等
⑥自然的環境・・天然資源、環境 等
2)ミクロ的外部環境
①消費者・・消費者市場、消費者購買行動 等
②競争企業・・競争構造 等
③利害関係集団・・サプライヤー、仲介業者、金融機関、マスメディア 等
④産業状況・・産業の規模や魅力度、供給構造、流通構造 等
外部環境分析においては、上記に対して、「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」を見極めていきます。
「機会」とは、売上・利益増につながる要因です。
例えば、経済成長率の上昇や対象商品が政府からの補助金対象になること、また、市場のトレンドやメディアの露出等も売上・利益の増加につながります。
一方「脅威」とは、売上・利益減につながる要因です。
例えば、人口減少、国交問題による不買活動、新技術開発による既存製品の需要減、競合他社の価格攻勢、原材料の値上げ等様々なマイナス要因が挙げられます。
これらの「機会」と「脅威」を見極めた上でより稼ぎやすい市場を選択する事はビジネスで勝利する為にとても大事です。
次に、内部資源分析は以下に分類できます。
①人的資源・・経営陣、営業人員、研究開発人員 等
②財務資源・・収益獲得能力、資金調達能力、キャッシュフロー 等
③物的資源・・保有資産価値 等
④その他資源・・技術力、情報力、知的財産、経営ノウハウ
内部資源分析においては上記に対して「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」を見極めます。
「強み」とは競合他社と比較して優位性のあるもの、「弱み」は優位性に欠けるものです。
例えば、企業Aは技術力はあるが、売上に繋げられていない
⇒営業力や開発力に弱みがある(市場のニーズをうまく製品に繋げられていない)
⇒市場調査により人員や資金を投入して、ニーズにマッチした製品開発につなげる
といった戦略策定に役立てることができます。
これらの環境分析を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字をとって、SWOT分析と呼びます。
SWOT分析ができたら次に目標の設定を行います。
マーケティングにおける目標を立てる項目としては以下4点が挙げられます。
①売上目標・・売上高の目標
②利益目標・・利益額、売上高利益率、資本利益率 等
③市場占有率(マーケットシェア)目標・・市場全体の売上に対する自社売上高の占有率
④企業・製品イメージ目標・・企業や製品、ブランドのイメージを良いものにする目標
②ターゲットマーケティング
目標設定が完了したら、次は市場の選定を行います。
市場の選定は以下の流れで行います。
①市場細分化
②標的市場の選定
③市場のポジショニング
①市場細分化
以下の基準に基づき、市場を細分化します。
・ジオグラフィック基準(地域、気候、人口密度等による市場細分化)
・デモグラフィック基準(年齢、性別、所得、職業、学歴、宗教、国籍等による細分化)
・サイコグラフィック基準(価値観、ライフスタイル等による細分化)
②標的市場の選択
細分化した市場の中でどこの市場をどのように狙うのかを選定します。
標的市場の選択パターンは以下の3つに分けられます。
・無差別型(細分化された市場間の差異を考慮せず、単一商品を投入する)
・差別型(差別化された市場ごとのニーズに適した製品を複数市場に投入する)
・集中型(特定の市場に特化して集中的に最適な製品を投入する)
企業の事業規模や市場の規模を考慮して、企業にあったパターンを選択できます。
③市場のポジショニング
市場の中で特にどのような位置づけで製品を投入していくのかを考えます。
例えば自動車の場合、横軸に「経済性 ー 高級感・名声」、縦軸に「小回り - 積載性」といった知覚マップを作製して、自社製品のポジショニングを検討します。
その際、既存の自社製品や勝ち目の少ない競合他社製品とぶつからないようにポジショニングする事もビジネスで勝利する為にはとても重要といえます。
③マーケティングミックスの開発、実行
このプロセスでは選定した市場に対し、目標を達成する為にどの様な製品を、いくらで、どの様に認知させて、どの様に提供していくのかを検討して、実施していきます。
例えば、年収600万円以下の20代~40代の子育て世帯をターゲットにした車両を200万円で、年間5万台の販売をめざす。
その場合、子育て世代が足を運ぶショッピングモールでのイベントや、子供と一緒に見る番組のスポンサーになってCMを流す等の広告戦略が考えられる。
このようにSWOT分析、市場選択結果を踏まえて、自社の資材を最適市場に投入する事でビジネスにおいて勝利する確率を飛躍的に増大させる考え方がマーケティングです。
マーケティングの4Pとは
マーケティング全体の流れを踏まえた上で、改めてマーケティングの4Pについて解説します。
マーケティングの4Pとは、企業が市場に投入する以下4つのマーケティング要素です。
①Product(プロダクト:製品)
②Price(プライス:価格)
③Place(プレイス:流通)
④Promotion(プロモーション:販売促進)
これら4つの要素についてさらに掘り下げていきます。
①製品戦略
製品の市場投入は以下の流れで行います。
①アイデアの創出・・自社の強みを活かすシーズ発想、市場ニーズを捉えるニーズ発想
②スクリーニング・・アイデアを事業戦略、経営資源、収益性等から絞り込む
③製品コンセプトの開発・・製品コンセプトの明確化と同時に市場ポジショニングも行う
④マーケティング戦略の検討・・コンセプトを基に戦略の基盤を固める
⑤経済性の評価・・売上、利益、原価をベストケース、ワーストケースでシュミレーション
⑥試作モデルの開発・・具体的製品への落とし込み、必要に応じて特許申請を行う
⑦テストマーケティング・・地域限定等で実験販売を行い、最終仕様を決定する
⑧市場投入・・上記工程からフィードバックを行い、適正な資源投入を行う
②価格戦略
価格設定の方法には以下の3つが有ります。
扱う製品・サービスの特徴に合わせた価格設定方法の選定を行います。
①コスト志向的価格設定法
⇒製造原価に一定の利益を上乗せして販売価格を設定する方法
必ず利益を得る事が可能ですが、インターネットの普及により生産者と消費者の情報格差が縮小したことで、単純なコスト思考的設定法では販売が困難になってきております。
②需要志向的価格設定法
⇒消費者が近くする商品価値を基準に価格を設定する方法
需要の確保と市場価格の値崩れを防ぐ事のバランスを考えた価格設定が必要となります。
③競争志向的価格設定法
⇒競合他社や業界のプライスリーダーの価格を考慮して自社価格設定を行う方法
主に価格差が売上に影響しやすい商品に活用される方法
③物流・商流戦略
物流・商流戦略の考え方は以下の3つが有り、それぞれの特徴を踏まえて物流・商流を考えます。
①開放的チャネル政策
⇒幅広く物流・商流を網羅することで、広く消費者に製品を供給する方法
主に日常品や食料品等に用いられる方法です。販売ボリュームの確保には有利ですが、得意先管理が複雑化し、販売店の協力度が小さくなります。
②選択的チャネル政策
⇒販売の幅をある程度限定して、優先的に販売していく方法
化粧品や家電製品等に用いられる方法です。販売努力の集中が容易であり、得意先管理も効率的になりますが、販売ボリュームも限定的になります。
③専属的チャネル政策
⇒販路を極端に限定し、専売権を付与する方法
主に自動車ディーラーやガソリンスタンドなどで用いられる方法です。ブランドイメージの維持、アフターサービスの充実等に有利な反面、消費者の認知度が低下するリスクが有ります。
④プロモーション戦略
製品・サービスを販売する為には顧客に認知してもらう事が第一歩となります。
その為の手法として以下の4つのプロモーション手法が有ります。これらの特徴を踏まえて、最適なプロモーションミックスを構築することで、プロモーション活動の費用対効果の最大化を図ります。
①広告
⇒メッセージの発信企業が媒体を通して製品や企業の情報を消費者に向けて発信する手法
DM広告、折込広告、屋外広告、交通広告(電車の中吊り等)、POP広告 等があります。
②パブリシティ
⇒企業が新聞社、出版社当に対して新製品情報等のニュース素材を提供する活動
比較的低コストで実施可能ですが、報道の実否は報道機関の判断による為、企業側でのコントロールはできません。
③人的販売
⇒販売員が顧客に直接接触して高騰にて製品の購入を促す手法
顧客の個別ニーズに対応した販売が可能ですが、情報の伝達可能数が限られます。
④販売促進
⇒消費者の購買意欲や販売店の販売意欲を喚起する手法
POP広告や発表会、展示会、サンプル提供等が挙げられます。
最後に
日本の終身雇用制度の崩壊により、起業を目指す方やベンチャー企業での活躍を考えられる方は今後ますます増えてくるかと思います。
そんな中で、本ブログが事業成功の一助になれば筆者冥利に尽きます。
今後も事業成功の役に立つような記事を書いてまいりますので、ご愛読をいただければと思います。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。